本研究では、平成21年度において1-Butyl-4-methylpyridinium Hexafluorophosphateを中心とした低温溶融性イオン液体のPd(II)の基礎的な抽出特性および電気化学特性の検討を行うことを目標として研究を実施した。最初に本研究では、1-Butyl-4-methylpyridinium Hexafluorophosphateおよび1-Butyl-3-methylimidazolium Hexafluorophosphateの合成試験を行った。得られたこれらのイオン液体の構造をFT-IRで分析に資したところ、市販のイオン液体と同様の構造であることが明らかとなり、合成方法が確立された。また、抽出特性基礎試験では、これらの得られたイオン液体を用いて塩酸水溶液中におけるPd(II)の抽出試験を実施した。何れのイオン液体においても塩酸濃度の増加に伴いPd(II)の抽出分配係数は低下することが確認された。さらに対イオンを硝酸イオンとすると、何れの硝酸イオン濃度においても、Pd(II)は殆ど吸着しなくなることが示された。電気化学特性基礎試験では、金属イオンの酸化・還元挙動を明らかとするため、Fe(III)を吸着させたイオン液体のサイクリックボルタモグラムを得た。本試験結果より、イオン液体の電位窓は-2~2V(vs.Ag/AgCl)であることが確認され、極めて広い領域で電気化学特性を追随できることが確認された。また、Fe(III)が抽出されたイオン液体は、可逆的なサイクリックボルタモグラムが得られた。このことから、イオン液体は、良好な導電性を有することが示唆された。
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