セルロース系バイオマスであるセルロースアセテート(CA)の廃棄物を資源として有効利用するため、部分分解後この分解生成物を有効利用する技術の開発を目指す(CAのリサイクルモデルの構築)。CA分解生成物を効率良く調製しこれを有効利用するため、CA分解活性が高く安定な酵素を大量調製する必要がある。そこで、好熱菌由来エステラーゼを大腸菌で生産することを試みた。好熱菌由米の酵素は耐熱性があり安定性が高い。特に高温下ではポリマーの高次構造が崩れ、効率がよく分解が進むと推測される。 好熱菌の遺伝子ライブラリーの中からCAエステラーゼと同じ働きをすると考えられる酵素遺伝子の検索を行った。まずゲノムDNAの解読が完了している好熱性菌11種の遺伝子情報からエステラーゼ類 約100種を選び出した。これらの中から、N.sicca SB由来のCAエステラーゼやアセチルキシランエステラーゼと相同性があるもの7種類を選別した。 選別したこれら7種類について、PCR用のプライマーを作製した。その際、ベクターにはpET22b(+)を用い、タンパクのN末端にはネイティブのシグナルペプチドに換えて大腸菌用であるPelB、C末端にはヒスチジンタグが融合するように設計した。 次に、PCR法で遺伝子の増幅を行った。そのときの産物の大きさは、遺伝子から推定した大きさと一致していた。得られた産物をpET22b(+)ベクターと連結した。構築した組換えプラスミドを大腸菌に形質転換した。得られた各遺伝子を発現させるため、これらのプラスミドを精製し発現用の大腸菌株に形質転換した。この大腸菌を培養して酵素タンパク質を生産させることができた。このことにより、CAの酵素分解を高温で効率よく行うことができ、セロビオースなどの分解物の生産性も向上し、これらを原料とした工業材料の開発が可能となる。
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