本研究における初年度の目的は、粉砕のみという簡便な手法によるセルロースの非晶化の可能性を検討し、粉砕条件と非晶化の相関を明らかにすることにある。具体的には、平成21年度は「木質系セルロース材料の新規非晶化技術の確立」を目的に研究を行った。今回は特にセルロース材料としてヒノキを対象に検討を行った。ヒノキチップを研究室製の粉砕システムにより粉砕し、その結晶性に与える影響を明らかにした。具体的には、(1)粉砕温度、(2)粉砕時の木片ペレットの水分量、(3)粉砕時の臼部の回転数の影響について検討した。各条件で粉砕され得られた木粉を広角X線回折や示差熱量測定(DSC)を用いて測定し、非晶化の有無について明らかにした。検討の結果、(1)~(3)で示したような粉砕条件を制御することで、セルロースの結晶性を制御可能であることが示唆された。この結果は粉砕のみでセルロースの結晶性を制御可能であることを端的に示しており、本分野の研究において非常に興味深い結果である。ここまでの成果を踏まえ、次年度の研究計画を前倒しで実施した。具体的には、得られた低結晶性セルロースをマレイン酸変性ポリエチレンに溶融ブレンドし、その分散性や変性効果について検討した。今後、セルロースの処理条件とマレイン酸変性ポリエチレンとのブレンド効果の相関について十分な検討を行う必要がある。当初の研究計画にあるように次年度は汎用ポリオレフィン材料を用いて、新手法による変性セルロースとの相溶性や物性への影響を明確にする。
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