研究概要 |
本研究では(1)申請者が有する技術のセルロースでの可能性を示すこと、(2)(1)の手法で得た改質セルロースと汎用プラスチック材料の機能性を明らかにすることを目的とした。これらを達成することで、最終的にはセルロースが高度にプラスチック中に分散し、強度劣化の少ない「低環境負荷型バイオプラスチック」が得られることが期待される。具体的には、今年度は(1)で得られた低結晶性セルロースとプラスチック材料とのコンポジット化を行い、機械的物性への影響を明確にした。ポリプロピレン(以,PPと略)に木粉を5、10、25、50wt%添加し、溶融混練した。混練後に引張試験用ダンベル型試験片を作成し、機械的強度への影響を明らかにした。PP単体、PP/結晶性セルロース(UC)、PP/低結晶性セルロース(AC)の各試料に対し、一軸引張試験を行った。PPにUC、ACを添加した系はPPと比較し、降伏応力には大きな違いは見られないものの明らかな破断ひずみの減少が見られた。特に注目すべき点は、UCとAC間の添加効果に差が見られないことである。この結果は、PPに対する添加効果にはセルロースの結晶性の違いは大きく影響しないことを意味している。これらの結果から、無極性樹脂であるPPへの添加においては、セルロー不の添加効果は見られないことが分かった。PP/UC、PP/ACの試験後の破断面をSEM観察した結果、両者の試験片の断面には複数のボイドが観察された。今回用いたマトリックス樹脂は分子内に極性基を有しないPPを用いているため、セルロースの結晶化度の違いによる添加効果が明確に現れなかったと考えられる。今後の課題として、ポリエチレングリコール(PEG)に代表されるような相溶化剤の添加や無水マレイン酸変性PPの添加を行うことで、低結晶性セルロースの添加効果が明確に現れると期待された。
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