研究概要 |
本研究では光応答性液晶を表面に結合させた無機ナノ微粒子を合成し,1)液晶分子の配向により無機ナノ微粒子集合体の規則構造が発現するメカニズムを解明し,2)液晶の光応答を利用して微粒子集合体の規則構造を光で操作することを目的とする。 2010年度は,液晶性アゾベンゼンを結合したナノ微粒子を合成し,透過型電子顕微鏡(TEM)用のグリッド上で凝集構造の観察を行った。その結果,金ナノ微粒子の自己組織化が起こり鎖状1次元配列,環状1次元配列および2次元規則構造を自発的に形成することが分かった。それぞれの自己組織構造は試料調製に用いる溶媒の極性により制御できることを見いだした。また,非液晶分子を結合した微粒子を用いて同様の観察を行った結果このような構造を示さないことから,このような自発的な規則構造の形成には,微粒子に結合する有機分子の液晶性が本質的に重要な役割を果たすことを明らかにした。 次に,このナノ微粒子の凝集構造をいろいろな固体基板の表面で観察した結果,液晶性アゾベンゼンを結合したものは基盤表面で単微粒子層を形成し,基盤表面の規則構造に依存する凝集構造を示した。一方,非液晶分子を結合したのもは基板表面でランダムな3次元凝集構造のみを形成した。液晶を結合した微粒子のみが単微粒子層を形成することおよびこのときの自己組織構造が基板の表面構造に依存することから,液晶分子と基板表面との間に作用する界面配向規制力がナノ微粒子の規則構造形成にも大きな影響を及ぼすことが推察される。
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