研究課題
今年度は昨年度に引き続き、原子においてマクロに区別できる量子状態の重ね合わせを生成する手法を探求した。ここで区別できる量子状態とは、原子の異なる回転状態(異なる軌道角運動量を持つ状態)のことを言う。昨年度は光と原子の有効三準位を用いて動的にこのような非古典的な状態を生成する方法を提唱したのに対し、今年度は同じ原子の有効三準位と共鳴状態の光を用いて静的に状態生成を行う手法を提案した。動的な生成法の場合、理想的な条件下では状態生成の忠実度を高めることは原理的には可能であるが、原子が損失し得るような現実的な状況下では、非古典的な状態はたちまち破壊されることがわかっていた。そこで今年度は、状態を破壊する一つの致命的な要素となる、原子の上準位からの自然放出の可能性を次のような方法で排除した。A型三準位原子に二つのラゲール・ガウス光を照射することにより、原子には光により付加的にゲージポテンシャルが誘起される。原子の状態は内部状態及び外部状態(運動の量子状態)によって特徴づけられるが、本研究では特に原子の内部状態として暗状態と呼ばれる状態にある場合に注目した。この暗状態では原子の上準位は占有されず、従って自然放出を著しく抑制することができる。このような条件のもと、誘起されたゲージポテンシャルの存在下で、原子の外部固有状態として(i)通常の回転状態(ii)回転状態の重ね合わせ、の場合についてエネルギーの比較を行った。実現可能性の高いパラメータ領域において重ねあわせに起因するエネルギーを光軌道角運動量の大きさや有効スピンの関数として定量的に調べた結果、(ii)の非古典的状態の方が有意にエネルギーを低くできることを確認することができた。
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