研究概要 |
我々はこれまでにフラーレンC_<60>が内部包接されたポルフィリンナノロッドの合成・作製に成功している(Chem.Commun,3372-3374(2008))。このナノロッドでは、外側にポルフィリン集合体層、内側にフラーレン集合体層という極めて希な内外二重構造を有しており、外側のポルフィリン層を光照射することにより良好な光誘起電子移動・光電変換機能が観測される。本研究ではこの系をさらに発展させて、フラーレンC_<60>に嵩高さの異なる置換基を導入したC_<60>誘導体及びC_<70>を用いて同様の作製条件によりポルフィリンナノロッド作製を行った。その結果、C_<70>を挿入したときは直径及び長さに変化がほとんど無いものの、C_<60>誘導体を用いたときは基本分子の嵩高さが増すにつれて直径及び長さともに増大するという結果になった。一方、動的光散乱法による粒子サイズ測定の結果から内包されるフラーレン集合体の粒子サイズは置換基の嵩高さが増すにつれて大きくなるという結果が得られた。これらの結果から、ポルフィリン集合体内部に内包されるフラーレン集合体のサイズがロッド集合体の構造にも大きな影響を与えていることが分かった。過渡吸収スペクトル・蛍光寿命測定からポルフィリン外層からフラーレン内層への光誘起電子移動過程は集合体サイズに大きく依存することが分かった。すなわち、ロッド直径が大きくなるにつれをて、電荷分離過程及び電荷再結合過程ともに寿命は長くなる。さらに、このナノロッドを透明電極上に薄膜化して光照射するとロッドサイズに依存して光電変換特性の変化が観測され、特にロッドサイズが大きい場合、良好な光電変換特性が観測された(IPCE:35%及び変換効率0.63%)。
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