研究概要 |
今年度は棒状の炭素材料であるカーボンナノチューブを用いた分子複合体の構築と電子移動及び光電変換機能の各特性評価を行った。まず、バンドギャップ特性が異なる単層カーボンナノチューブ[(7,6)-SWCNT or (6,5)-SWCNT]にポルフィリン色素を修飾した分子集合体の構築を行った。透過型電子顕微鏡による構造評価及び紫外可視吸収・蛍光スペクトルによる定常分光測定により集合体形成を確認した。次に、光誘起電荷分離過程の評価を行った。蛍光寿命測定及びナノ秒過渡吸収スペクトル測定により電子移動(K_<cs>)及び電荷再結合過程(K_<CR>)の速度定数を算出し、その電子移動効率比K_<cs>/K_<CR>,を比較したところ、(7,6)-SWCNTの方が高い値を示すことが分かった。また、電子移動効率比が光電変換特性にも影響を与えることを明らかにした。これらの研究成果はカーボンナノチューブの電子移動におけるバンドギャップ依存性を示す最初の報告例となった(J.Am.Chem.Soc., 2010,132,8158-8164)。さらに、カーボンナノホーンとポルフィリン色素が超分子組織化された分子集合体を構築し、その構造、光誘起電子移動及び光電変換特性の評価を系統的に行った(Chem.Eur.J.2010,16,10752-10763)。この場合も光電気化学セルによる光電変換特性評価では光電流発生の外部量子効率(IPCE)は十分な値ではないが、カーボンナノチューブの光機能化において新たな分子集積手法を確立した。
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