研究概要 |
近年の電子機器の小型化に伴い、微細化の技術限界を打破する様々な極微デバイスが提案されている。その中で、原子スイッチはAg_2Sなどの固体イオン伝導体を利用し、金属原子数個の移動によるスイッチングを可能とした有望なデバイスである。この原子スイッチにおいて、両電極間の電気伝導度を光などの外場によって制御することが出来れば、イメージングデバイスなどの実現が可能となる。そこで本研究では電極間に光伝導性有機薄膜を存在させることによって、光照射によるスイッチングの実現を目指している。光伝導性有機薄膜として固体の物質を使用した場合、一度架橋がなされた後、Ag細線が後退する際に細線が存在した位置に空孔が生じるため際架橋が難しくなるためデバイスの性能劣化につながる。つまり、光伝導性有機薄膜として液晶性薄膜を用いれば、Ag細線の伸縮に伴う欠陥が自己修復されデバイスの性能を維持することができると思われる。そのため、光伝導性を持ち、かつ液晶であるようなN,N'-di(3,4,5-tridodecyloxyphenyl)parylene-3,4,9,10-tetracarboxylic acid diimideの合成をおこなった。液晶性を有することが確認でき、本研究の目的に合致する。またデバイス作製に必要なナノギャップ電極作製手法も確立することができた。来年度、この分子およびナノギャップ電極を用い、光応答スイッチングの確認や他の液晶系分子の合成などを通じ、理想的な光応答スイッチングデバイスの構築とその高機能化を目指す。
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