近年、医用工学分野において、生体内で高効率の可視発光を示し、がん細胞や薬剤などと融合させることのできる標識(バイオイメージング)用半導体ナノ粒子材料が注目されている。しかし、現在医用工学用に研究・開発されている半導体ナノ粒子材料は、生体内投与における材料の安全性やがん細胞との吸着反応性に問題を抱えている。そこで、本研究では人体への影響の少ない無害性・無毒性材料であるシリコンナノ粒子を用い、粒子とがん細胞との反応性を向上させるために粒子表面への修飾技術の構築について検討した。試料には、既にサイズ制御、マルチカラー化、高輝度化技術を確立している製造方法により生成した球状のシリコンナノ粒子(粒子サイズは約3.0nmである)を用いた。この粒子表面にポリエチレングリコールを修飾した。ポリエチレングリコールを修飾したシリコンナノ粒子は、粒子間での凝集が抑制され、純水中において長時間安定した状態で粒子を分散させることに成功した。また、この粒子に紫外線を照射することで、670nmにピークを有する赤色発光を高い収率で得ることができ、その輝度は肉眼で十分に目視できるものであった。さらに、ポリエチレングリコール以外にも抗体などの生体分子との反応性の高いアミノ基を粒子表面に修飾させても同様の結果を得ることができた。 このように、本研究では、発光機能を損なわずに、がん細胞や生体分子などとの吸着性に優れた官能基をシリコンナノ粒子表面に修飾させる技術を確立することができた。
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