今年度は、ナノ薄膜の『ナノ厚のガス分離膜』としての利用性の検討を行った。はじめに約30nm程度のエポキシーシリカのナノ薄膜を作製し、それ単独での気体誘過性の検討を行った。具体的には、作製したナノ薄膜を多孔質アルミナ基板上に貼り付けたものをサンプルとし、それをガス透過用の上下2つのセルの間に挟み込み、一方を減圧とすることにより、その圧力変動の時間依存性を測定し、ガス透過性の検討を行った。各種ガス(窒素、アルゴン、酸素、空気)について実験を行ったが、気体分子の大きさの違いによる透過性の差異は誤差範囲内程度しか確認されず、またある程度フリーに透過している結果であった。これまでの液体透過の研究結果や、ナノの厚さの薄膜でありながら強度的に充分なエポキシーシリカのハイブリッド膜を使用していることを踏まえると、作製されたナノ薄膜にマクロなピンホールが存在するとは考えにくい。従って今回使用したナノ薄膜は、SEMやTEMレベルでは欠陥がないが、原子・分子レベルでの空隙を多く含んだポリマー材料であることが推察される。一般にポリマー薄膜の気体透過性は、ペロブスカイト系の無機膜のそれと比較して高いことはよく知られているが、ナノ厚であるたあに、その特性が顕著に表れた結果となった。 ガスが自由に透過しているということは、その選択性において問題となる。従ってナノ厚の分離・透過腰を設計するためには、より分子・原子レベルで充分に密なポリマー薄膜を作る必要性が生じている。具体的には、ガスバリア膜としてすでに使用されているシリコン系の高分子やポリ塩化ビニリデンを薄膜化することにより対応していく必要がある。その中で、架橋型ジリコンポリマーは、薄膜状態において充分な強度を発揮するたあの架橋構造を有しているととかち、有用な材料と思われ、すでに薄膜化についてはある程度成功している。
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