1次元のみがナノスケールであるナノ薄膜は、マクロな取り扱いができるナノ材料として注目を浴びている。その中でも分離・透過機能は、ナノ薄膜の特徴を最大限に生かした機能と言え、このような材料を創製することには、大きな意義がある。前年度は、機械的強度の優れるエポキシーシリカのハイブリッド膜を用いて、ナノ薄膜のガス透過性を検討したが、各種の気体透過性に大きな違いが見られなかった。これは薄膜の緻密さ不足に起因し、原子・分子レベルでの空隙を通って、気体の透過が自由に行われたためと考えられる。そこで今年度は、緻密性に優れたシリコン系の高分子やポリ塩化ビニリデンの薄膜化を、はじめに検討した。しかしながら得られた薄膜は、機械的強度に乏しく、大面積での自己支持性は発現できなかった。あるいは可撓性不足のために、圧力に対して容易に破損するといった結果であった。そこで次に、得られたナノ薄膜を別の多孔質基板へとトランスファーをし、機能分離型の透過膜の作製を試みた。具体的には、陽極酸化アルミナ基板へのトランスファーを試みたが、やはり機械的強度不足により、ナノ薄膜が簡単に破けていた。透過膜には、緻密でかつ空孔が制御された膜が求められるが、極めて薄いナノ薄膜単独で、機械的強度と緻密さの両立は難しいという結果であった。 ナノ薄膜は他の基板に強固に貼り付く。この特性を生かし、ナノ薄膜を分離透過膜に貼り付けられれば、分離・透過に大きく寄与する表面状態のみを変化させることが可能である。機械的強度の優れるナノ薄膜を、様々な基板に貼り付けたところ、その表面特性をナノ薄膜のそれへと変化できることが確認された。加えて、その他の特性、例えば機械的強度は基板が支配的であったことから、このコンセプトの有用性が伺えた。この特性を生かせば、分離・透過膜のスキン層としての利用が期待される。
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