研究概要 |
本研究は,個々の分子をナノ構造体へ導入し,分子どうしの反応を直接観察する手法を開発することを目的として開始した.具体的には気相法や液相法など様々な状態でナノ構造体の内部あるいは外部へ分子を導入する手法を開発するとともに,ナノチューブなどの直径を変化させてナノ空間の自由度を広げたり,さらには異種の分子を効率的にナノ構造体へ導入するための装置を準備し,複数の分子を様々な大きさのナノ空間へ導入する方法を検討した.昨年度は,直径が十分に大きなカーボンナノチューブを用い,気相法でさまざまな大きさの異なるフラーレン分子をチューブ内部に導入し、電子顕微鏡で観察することに成功した.この成果は2010年発行のNature Chemistryに出版され,産総研,東大,科学技術振興機構のウェブサイトでプレスリリースされた他,新聞4紙に記事が掲載された.今年度は、単分子から分子集合体へと研究を展開し、結晶性の有機薄膜を作製し,その高分解電子顕微鏡像,電子回折,電子エネルギー損失分光,エネルギーフィルター像観察,理論計算などを駆使して欠陥などの局所構造の解析を行った.これら有機単分子および結晶性有機分子の分析技術は,有機分子デバイスなどの構造制御に関する重要な知見を得るのに有効な分析手法であることを示した.
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