1.自律的情報処理を行うための基盤の確立:非平衡性の導入 生命システムは自律的に判断・行動するシステムである。すなわち、生命システムに学んだデバイスを開発する上で、自発的運動・自律的情報処理という仕組みは不可欠である。物理科学的には、自律性の根源はシステムの非平衡性であることが知られている。本研究では、この点を重要視し、細胞サイズでありながら、非平衡性をもったシステムの構築を行った。特に、マイクロ技術を利用することで、生化学反応を行うための細胞サイズ微小容器に、常に物質が流入出するような、化学非平衡系を実現することに成功した。この微小容器は、油中の水滴をベースに作られている。油水界面には、細胞膜を構成するものと同じリン脂質が使われている。すなわち、非平衡性を取り入れた人工細胞モデル研究に利用できる技術である。 2.DNAナノエンジニアリング DNAは生命システムの遺伝子の情報を記憶する重要な化学物質であるが、近年、この物質は生物学的な役割を超えた、プログラマブルな化学物質として利用されつつある。DNAナノエンジニアリングという方法論であり、ナノ構造を作るための材料としてDNAを利用したり、自律的情報処理のための要素としてDNAを利用したりできる。本研究では、DNAを利用したマイクロカプセルの開発や、DNAを化学物質のセンシングのために利用したりする仕組みの開発を行った。いずれもDNAの配列特異的な特長を生かしたプログラマブルなシステムとなっている。
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