研究概要 |
生命システムは数多くの分子の相互作用で情報を処理する高度なシステムである.このシステムの情報の流れは,全て,一細胞あたりに一分子しか存在しないゲノムDNAからスタートする.つまり,この高度な情報システムの根幹は,驚くべきことに,単一分子レベルの分子制御で実現されているのである.本研究では,DNAが可能にしているこの単一分子レベルの分子制御をモデル化した自律型のDNA情報処理システムの構築をめざす.そして,細胞内やナノ空間において単一分子で機能する,究極のナノ情報処理システムの基盤構築をめざした基礎研究を行うことを目的とする. 本年度の研究で,ダイナミックに溶液交換ができるマイクロサイズの油中水滴ベースの反応容器をマイクロ加工技術によって作製することに成功した.これにより,マイクロサイズの空間(体積にしてフェムトリットル~ナノリットル、細胞の体積と同じオーダー)での分子反応システムを調べる手法を構築することができた.また,ダイナミックに溶液交換ができるマイクロサイズチャンバーの中で起こるダイナミクスが,溶液交換ができる場合(非平衡開放系)と,できない場合(閉鎖系)でどのように変わるのか,数値シミュレーションをベースにした非線形解析行い,系の挙動を評価した.さらに,アルギン酸カルシウムゲル(ハイドロゲル)によるマイクロビーズを用いた細胞サイズリアクターや,脂質二重膜による細胞サイズリアクターを構築する手法を開発し,単一分子レベルのDNA分子情報処理システムが駆動できるシステム構築を発展させることができた.
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