研究課題
本研究では、生体ナノモーターであるミオシン分子に力学的なノイズを加えて一方向運動中におけるブラウン運動過程を制御するのが目的である.前年度までに、ミオシン分子のブラウン運動過程を1分子レベルでナノ計測し、操作を加えることが可能な1分子計測顕微鏡が完成し、本年度では、実際にミオシンV分子に対する観察を行った。ミオシン分子のブラウン運動過程を可視化する唯一のプローブは金ナノ粒子であり、始めに金ナノ粒子の光ピンセットによる操作と暗視野観察による検出性能を調べ十分な時空間分解能を持つことを確認した。次いで、ミオシンVのビオチン化ハロタグ領域に対して、自作のアビジン金ナノ粒子(アルカンチオール修飾を施し粒子の凝集を防ぐ)を結合させて光ピンセットによるナノ計測を行った。60nmの金ナノ粒子でミオシンVの一方向運動が観察されたことから、従来のプローブよりも3-5倍程度微小で時間分解能の高い世界最高スペックの系の構築に成功した。しかしながら、過去の知見よりもモーターの運動速度が速く、金属粒子を光トラップすることにより発生する熱の影響が示唆された。そのため、DNAナノ材料を利用した新たな光ピンセットの系を開発し、ブラウン運動過程の制御を試みた。ミオシン分子のモーター部位に60nmのDNAリンカーを結合後、200nmのポリスチレンビーズを付加し光ピンセットで操作することにより、ブラウン運動過程の可視化と力学的操作を同時に達成することが出来た。生体ナノモーターのブラウン運動過程を力学的に抑制、変調する世界で初めての試みであり、論文を投稿準備中である。
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Journal of Chemical Physics
巻: 133 ページ: 045103-1-045103-11