本研究では、これまで当研究室で確立してきた「単ノズル-静電微粒化法」と呼ばれる手法を応用し、カプセル壁膜を形成する高分子溶液に種々の機能性微粒子をあらかじめ混合しておくことで、これらの機能性粒子をカプセル壁膜に複合化した多機能性マイクロカプセルを調製する事を目的としている。また、この手法で得られた多機能性マイクロカプセルの応用の一例として、チタニア微粒子(TiO_2)と磁性粒子(Fe_3O_4)をカプセル壁膜に複合化し、カプセル内部に酵素を包括することで、人工光合成マイクロリアクターの創製を試みる。 今年度はこのための第ーステップとして、静電微粒化は行なわず、まず自然滴下のみの条件で、チタニア微粒子(TiO_2)と磁性粒子(Fe_3O_4)を複合化したカプセルの調製実験を行った。カプセル壁材としてこれまで当研究室で用いてきたアルギン酸ナトリウムを用い、高粘性液体としてカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を、またカプセル壁の硬化剤として塩化カルシウムを用いて実験を行った。その結果、壁膜材料であるアルギン酸ナトリウム水溶液に混入させる各機能性粒子の濃度を変えることで、カプセルに導入する機能性粒子の濃度を0-5wt%の範囲で制御可能な事が分かった。また、滴下流量や滴下後の反応時間を変えることで、カプセル粒径及び、膜厚を制御可能な事が分かった。 更に同様の実験を静電微粒化モードで行った結果、カプセル粒径を自然滴下の時のミリメーターオーダーからマイクロメーターオーダーにまで減少させることが出来た。これらの結果より、本法を用いる事で、機能性粒子を壁膜に複合化した多機能性カプセルを簡便に調製可能な事が示された。 また以上の結果は、今年度目的としていたことがほぼ達成できた事を示しており、また、学術的にも「多機能性マイクロカプセルの簡便な調製手法」を確立できた意義は大きいと考えられる。
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