本研究では、これまで当研究室で確立してきた「単ノズル-静電微粒化法」と呼ばれる手法を応用し、カプセル壁膜を形成する高分子溶液に種々の機能性微粒子をあらかじめ混合しておくことで、これらの機能性粒子をカプセル壁膜に複合化した多機能性マイクロカプセルを調製する事を目的としている。また、この手法で得られた多機能性マイクロカプセルの応用の一例として、チタニア微粒子(TiO_2)と磁性粒子(Fe_3O_4)をカプセル壁膜に複合化し、カプセル内部に酵素を包括することで、人工光合成マイクロリアクターの創製を試みる。 昨年度の研究で、本法を用いる事でチタニア微粒子(TiO_2)と磁性粒子(Fe_3O_4)を複合化した多機能性カプセルを簡便に調製可能な事が示された。 そこで今年度は、得られたカプセルの機能性の評価を行った。まずチタニアの光触媒能をメチルオレンジ分解実験により評価した所、TiO_2導入カプセルによってメチルオレンジの分解が可能で有ることが分かった。次に、後に行なう人工光合成において使用する予定の電子伝達体である、メチルビオローゲン(MV^<2+>の還元実験を行った。その結果、このTiO_2導入カプセルは、UV照射下でメチルビオローゲンの還元が可能な事が示された。以上の結果より、TiO_2導入カプセルは、人工光合成を行うのに十分な光触媒能を有している事が示された。また、Fe_3O_4を導入したカプセルにおいても、数%程度の導入量で十分なハンドリング性の向上が可能な事が分かった。また、TiO_2とFe_3O_4の両方を含有するカプセルの調製において、それぞれの導入量が2wt%以下の条件では、カプセル粒径に影響を与えない事が示された。 以上の結果は、今年度目的としていたことがほぼ達成できた事を示している。また、このような多機能性カプセルを容易に調製可能になった事は、その応用が人工光合成に限らず広範囲に及ぶ可能性があるため、その学術的意義は大きいと考えられる。
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