本研究では、これまで当研究室で確立してきた「単ノズル-静電微粒化法」と呼ばれる手法を応用し、カプセル壁膜を形成する高分子溶液に種々の機能性微粒子をあらかじめ混合しておくことで、これらの機能性粒子をカプセル壁膜に複合化した多機能性マイクロカプセルを調製する事を目的としている。また、この手法で得られた多機能性マイクロカプセルの応用の一例として、チタニア微粒子(TiO_2)と磁性粒子(Fe_3O_4)をカプセル壁膜に複合化し、カプセル内部に酵素を包括することで、人工光合成マイクロリアクターの創製を試みる。 昨年度の研究で、TiO_2導入カプセルが人工光合成を行うのに十分な光触媒能を有している事、またFe_3O_4を導入したカプセルが十分なハンドリング性の向上を示す事が示された。 そこで今年度は、単ノズル-静電微粒化法で作製した微小カプセル内に酵素を固定化可能かを検討するためにまず、測定が容易なインベルターゼ、セルラーゼを用いて実験を行った。その結果、これらの酵素を包括した固定化酵素カプセルの調製は可能であること、またカプセル粒径を小さくすれば、固定化酵素カプセルの見かけの反応速度も上昇する事が分かった。次に光触媒であるTiO_2と生体触媒であるジアホラーゼ、ギ酸脱脱水素酵素を電子伝達体であるメチルビオローゲン及びNADHで結ぶことで人工光合成反応を行う事が可能かどうかを確認した。この時、酵素による反応をセラミック膜の内側で、そしてTiO_2による光触媒反応をセラミック膜の外側で行う事で、酵素の光失活を防ぎながら実験をおこなった。その結果、セラミック膜で光触媒反応と酵素反応を分けることで、光による失活を防ぐことができ、この反応によりギ酸を生成可能で有ることが示された。ただこの時、犠牲剤としてエタノールが必要であった。現在、この系をマイクロカプセルに移し、最終的な人工光合成リアクターの創製に着手している。 以上の結果は、最後の応用の所のみ残しているが、本研究の大きな目的である多機能性マイクロカプセルの調製法の確立は出来たことを示しており、学術的、また工業的な応用可能性も含め、意義は大きい。
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