研究概要 |
本研究ではバイオナノ粒子を用いた金属誘起横方向結晶成長(Metal Induced Lateral Crystallization:MILC)によって、MEMS構造材料として使われているシリコン薄膜の応力状態を制御し、高性能MEMSデバイスの実現を目指す。 従来、膜応力制御の手法として、アモルファスシリコン薄膜が結晶化する際の体積収縮に基づく結晶化誘起応力が利用されてきた。しかしながら、ただアニールするだけでは処理時に結晶成長核がランダムに発生するため、結晶粒径サイズは1μm程度に限られていた。この結晶化の過程を制御して結晶粒径を拡大すれば、応力値も大きくなると考えられ、MEMSデバイスの動作特性が大きく向上することが期待される。 平成21年度は、バイオ分子を用いて合成されたNiナノ粒子の触媒能を利用して結晶粒径を拡大し、応力増大を目指した。アニール処理温度800℃のMILCによって、ポリシリコン薄膜の結晶粒径は20-30μmにまで拡大した。Niナノ粒子を吸着させずにアニールを行ったサンプルでは結晶粒径が1μm以下の状態であり、MILCによって結晶粒径が格段に大きくなることが明らかになった。またこのMILC処理によって、結晶化誘起応力が90MPaから200MPaへと増大した。得られた結晶化誘起応力値は、しかしながら、論文報告値(800MPa,600℃付近でのアニール処理時)に比較して小さい。今後、応力値の更なる増大を目指して、アニール処理条件等の検討を進めていく予定である。
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