本研究の目的は、生体由来のナノアクチュエータであるモータタンパク質とDNA分子を融合して、「分子による分子操作」を大量かつ並列におこなう分子アクチュエータシステムを構築することである。具体的には、微小管上でのキネシンあるいはダイニンモータタンパク質の運動と、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)とUVリソグラフィ(UVL)の併用によるマルチスケール流体デバイスを融合する。これにより、マイクロ・ナノ構造による分子配置を可能にし、DNA分子を1分子ずつ、一方向に、大量かつ並列に搬送、伸張するアクチュエータを製作する。 当該年度においては、(1)NILとUVLの融合によるデバイス製作、(2)アレイ化DNAの固定と制限酵素処理過程の可視化に取り組んだ。これまでに、NILによる幅500-2000nmのサブナノチャネルとUVLによる幅300umのマイクロチャネルを融合した流体デバイスを製作した。またこれに流体制御系の確立を行い、バイオアッセイのための微量流体の灌流作業ができることを確認した。このデバイスを用いてキネシンによる微小管の運動アッセイも実現できた。一方、DNAの制限酵素処理過程の可視化も伸長後のDNAを用いて実現した。しかしながら、DNAをアレイ化して微小管により駆動するに至らず、今後の課題が残った。本研究課題で製作したマイクロ・ナノ流体デバイスに限らず、さまざまな方法によりDNAを並列操作する分子システムの構築を目指し今後検討を続ける。
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