本研究の目的は、立体構造を作製した基板上に3つのnano-SQUIDを配置し、3次元の局所磁気センサーの実現を目指すことであった。 昨年度は、3次元磁気センサー作製の要素技術となる、nano-SQUID自体の作製プロセスの開発を行った。その結果、4.2Kにおいて良好な特性を示すnano-SQUIDを作製することが可能となった。 一方で、1K以下の極低温状態での使用を前提とした場合、nano-SQUID動作時の発熱量は小さければ小さいほど好ましく、作製プロセスにも更なる改良が必要と考えられた。具体的には、nano-SQUIDのIcを更に低減する必要があり、そのためにはNbの膜厚を更に薄膜化する、などの必要性が生じた。 そこで今年度は、Nbの膜厚を更に薄くしていった場合に、Nbの超伝導性がどのように変化するのか、について検討を行った。昨年度の時点で、すでに膜厚は16nmまで薄くなっていたので、更に薄膜化を進めていった場合、その薄膜の超伝導特性は自明ではない。実際、Nbの膜厚が30nmから10nmの領域において、Nbの超伝導性は著しい膜厚依存性を有することがわかった。 また、Nb薄膜を用いたnano-SQUIDのIcには、大きなバラツキがあることも判明した。現時点では、Nb膜の膜厚にバラツキがあり、それが原因となりnano-SQUIDのIcが大きな分布を持ってしまうのではないか、と予想しているが、成膜プロセスの見直しなど更なる検証が必要と考えている。 本研究の目的である3次元磁気センサーは実現できていないが、極低温、かつ強磁場中で使用可能なnano-SQUIDの作製プロセスは確立できたと考えている。
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