金融工学的手法であるリアルオプションを用いた原子力発電リプレースの経済性分析に向けて、平成21年度は査読付き論文1件、図書1件および24件の学会・国際会議発表を行った。本研究課題の成果は以下のとおりである. 既存の原子力発電プラントの廃止措置の意思決定は、新規設置プラントの建設投資から操業し、収益が得られたときの価値、すなわち、新規設置プラント自体の価値が既知の状態で行われる。本研究では、これをリプレースの意思決定問題として定式化を行い、本年度は、その基本モデルを構築した。本研究の評価モデルは、廃止措置オプションと新規設置オプションの複合モデルという特徴を有しおり、今後の拡張のために、解析的だけではなく、数値的アプローチからも解を求めることが可能となるように研究を遂行し、その結果、両方のアプローチから解を得られることを確認した。本年度では、このように解を得ることが可能なモデルの構築を行い、今後の拡張モデルの構築、具体的には、リプレースと寿命延伸の選択や、計画外停止の不確実性を付加させることを考えた。また、本モデルを用いることにより、原子力発電プラントリプレースの意思決定に対する電力価格の不確実性やトレンド、または、廃止措置期間の影響について分析を行った。 これらの研究成果は、Energy Policyに掲載されたことや、リアルオプション国際会議、米国オペレーションズ・リサーチ/経営科学学会(INFORMS)、日本オペレーションズ・リサーチ学会、日本リアルオプション学会等の国内外の学会・国際会議において発表され、有益な成果が得られたものと考えられる.
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