研究概要 |
金融工学的手法であるリアルオプションを用いた原子力発電リプレースの経済性分析に向けて,平成23年度は査読付き論文1件,図書1件および17件の学会・国際会議発表を行った.本研究課題の成果は以下のとおりである. 前年度は,リプレースプロジェクトの評価モデルの精緻化として,既存プラントの廃止措置時点と新規プラントの設置投資時点にタイム・ラグ(すなわち,有限な廃止措置期間)や新規プラントの設置期間が存在するときの状況を考慮したモデルの拡張を行った.今年度は,リプレースの意思決定のみならず,廃止措置や設備更新の意思決定が存在するときの問題に関するモデル構築及び分析を行った.基本ケースにおいて,売電価格の水準に依存し,廃止措置,リプレース,設備更新,リプレースをそれぞれ実行する4つの領域に併せて,廃止措置,もしくはリプレースを選択する領域とリプレース,もしくは設備更新を選択する領域の7つの領域が存在することが明らかとなった.これらの領域に対し、不確実性や費用の影響について分析を行った.その結果,不確実性が大きくなるにしたがい,廃止措置,設備更新の機会は減少するものの,リプレースを選択する機会が増加することが明らかとなった.これは,リプレースという意思決定の他に,廃止措置,設備更新が存在することから,これらの意思決定に対して相互作用がはたらき,個々の意思決定を単体で考えたときと異なる結果になったと考えられる.また,設備更新費用の増大により,設備更新を選択する機会は減少するものの,リプレースを選択する機会は大きく増加することがわかた. これらの研究成果は,日本リアルオプション学会論文誌に掲載されたことや,国際エネルギー経済学会(IAEE),米国オペレーションズ・リサーチ/経営科学学会(INFORMS),日本オペレーションズ・リサーチ学会,日本リアルオプション学会等の国内外の学会・国際会議において発表され,有益な成果が得られたものと考えられる.
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