1.研究の目的 社会の高齢化に伴い、脳卒中などの急性疾患の後遺症や、成人病をはじめとする慢性疾患への治療後の対応に対する重要となり、リハビリテーションの重要性が増してきている。リハビリテーションは、「リハビリ訓練計画」に基づいて実施されるが、リハビリ訓練計画を立案するための科学的な方法論は確立していない。本研究では、2年間の研究期間内に、リハビリ訓練計画を立案するためのモデルを開発し、モデルに基づく方法論の確立を目指した研究を行う。 2.研究の実施内容 本研究を実施するにあたっては、大久野病院(東京都青梅地区にある174床規模の回復期リハビリ病院)の協力を得て、理学療法士、作業療法士、言語療法士、医師、看護師と一緒に行った。対象疾患としては、まずは大久野病院の患者に多い脳卒中を対象として行った。 (1)リハビリ訓練計画立案モデルの設計 加藤らの提案する「ケア決定プロセスモデル」をベースとして、「目標状態」、「訓練」等の概念を新たに導入し、患者が目標状態に到達するために必要な訓練を導出する合理的な思考プロセス、必要な知識構造をモデル化した。 その結果、考慮すべき要素と要素間の関係を定義した「フレームワーク」、最適解を導出するための合理的な思考手順を定義した「メソッド」、メソッドを実行するために必要な知識の構造を定義した「知識構造」、知識構造に基づく具体的なコンテンツである「知識コンテンツ」から構成される階層的なモデルを設計した。 (2)モデルに必要な知識ベースの構築 (1)で設計したモデルの構成要素である「知識コンテンツ」を構築し、具体的な知識ベースを構築した。ADL(Activity of Daily Living:日常生活動作)の項目として、「移動」「食事」「排泄」の3項目に絞って構築を行った。 その結果、日常生活における患者の具体的な動作を表現する要素動作57個、患者の目標状態を表現するための置換方法339個、患者の状態を評価する指標である能力要素37個、能力を向上させるための訓練364個から構成される具体的な知識ベースを構築した。
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