研究概要 |
本研究の対象である半正定値計画問題(Semilleinite Programming,以下SDP)は、線形計画問題のHilbert空間への拡張である。SDPに対する効率的なソフトウェアが開発されると、量子化学や制御理論などSDPの様々な応用で、実際に数値計算を行なうことができるようになる。 SDPは、主双対内点法で解くことが多いが、近年の応用である多項式計画問題やセンセーネットワーク問題では、主双対内点法の計算時間の多くを占あるSchur補完行列が疎行列になることが解かっている。つまり、これらの応用ではSchur補完行列は、ほとんどの要素が0となるため、0となる要素をスキップすることで高速に計算することが可能である。 本年度は、これまでに開発してきた並列SDPソルバーSDPARA (SemiDefinite Proramming Algorithm)を改良して、疎なSchur補完行列を効率的に計算することを可能にした。 Schur補完行列の計算時間は、主にその要素の計算と行列のCholesky分解である。要素の計算では、それぞれの要素に必要な計算時間を問題の入力からあらかじめ予測し複数のプロセッサに平均的に計算負荷がかかる分散方法を導入した。また、並列疎コレスキー分解ライブラリMUMPSの入によって、Cholesky分解についても大幅に計算時間を短縮することを可能にした。 これらの改良により、従来解くことのできなかった30,000点以上のセンサーをもつセンサーネットワーク問題を実際に計算することが可能になった.この結果については国際数理計画学会ISMP2009で成果発表を行なった。
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