多機能コールセンターを確率モデルを用いて分析を行うために、その性質について基礎的な文献調査を行った。多機能コールセンターの特徴的な事柄として、コールを担当するオペレータがあい異なるスキルを持つこと、またスキルに応じて多様な契約を結んでいることがわかった。そこでコールセンターの性能評価においては、スキルを取り込んだモデル化が必要であることが明らかになった。そこで研究代表者は、オペレータをサーバ、客からのコールを呼とした待ち行列モデルを構成した。その際、呼を複数のクラスに分類し、サーバをいくつかの特定のクラスのみを処理できるグループに分割し、呼は処理できるグループを順に探索することで、オペレータの多様なスキルを表現することを提案した。この待ち行列モデルはグループ毎に即時系を持つ非循環型待ち行列ネットワークとなる。 研究代表者は、提案モデルにおける呼が処理を受けることが出来ない確率といった指標の数値的な計算手法について、従来の電話交換機に対する既存の成果と対照しながら、検討を行った。その結果、呼の発生としてボアソンないし断続ポアソン過程を用いること。およびネットワークの非循環敵名構造を利用して、上流のグループから順に処理を受けることが出来ない客の発生過程を近似し、逐次的に全てのグループにおける指標を近似計算する手法を提案するに至った。提案された近似計算手法は、シミュレーションに比べ高速に指標の近似値を導出しうることを明らかにしたが、その精度は一般的なパラメータ設定において十分であるとはいえないため、次年度に引き続き手法の検討を進める予定である。
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