【内容】平成22年度は、先進的原子力や低炭素自動車を中心に種々のエネルギー供給・需要技術の社会実装時に関連するマテリアルの入出在分析を行った。具体的には、電気自動車などの量産時に必要となるレアアースの生産量・埋蔵量の調査を行い、これにかかわる課題(放射性物質トリウムの扱い)についても検証し、それらの供給予測にともなう今後40年間の蓄積予測を行った。低炭素エネルギー源として期待される先進原子力のうち、トリウムを利用する技術の現状分析を行うとともに、この実装量の予測を今後40年間に対して行った。トリウムの発生はレアアースの生産に支配され、今後、数十万トンの規模で発生する一方、トリウムの消費は数万トンに限られ、結果として、トリウム在庫は蓄積することを明らかにした。本研究で得られた成果は、国内外の学会で公表するとともに書籍としても刊行し、公衆への周知に努めた。 【意義】温暖化対策において求められるエネルギーの供給・需要サイドにおける低炭素化技術を実装した装置の社会普及時のマテリアルの需給バランスの分析は、技術開発の次段階にある産業化時の競争力確保において不可欠であり、本研究の意義は大きい。 【重要性】本研究ではエネルギー技術の中心にあるレアアースの需給バランスについて検証したが、これは昨年中国からの供給停止の事実に見るように喫緊の課題である。特に、レアアースの使用量削減などの微視的視点ではなく、世界でのレアアース供給の生産量・埋蔵量・課題などを包括的に取り上げたのは、本研究者のみであり、その重要性は歴史的・世界的に際立っている。
|