研究課題
研究期間の1年目である本年度は、研究課題全体の基盤となる、不動産価格評価の理論フレームワークの構築を行った。以下に、得られた結果の要点を2つに分けて述べる。1、完全競争市場における、均衡不動産価格、および均衡不動産賃料の評価公式を導出した。得られた評価公式は、以下のようにまとめられる。均衡不動産賃料の源泉は、不動産が有する属性である。つまり、均衡不動産賃料は、保有する属性量にその属性単価を掛け合わせた総和として与えられる。ここで、属性単価は、属性・消費間の限界代替率として表現される。そして、均衡不動産価格は、将来にわたって発生する均衡不動産賃料の現在価値の期待総和として与えられる。よって、先行研究との関連で言えば、均衡不動産賃料はヘドニック・モデルを拡張したフレームワークの中で捉えることができる。一方、均衡不動産価格はDCF法を拡張したフレームワークの中で捉えることができる。2、さらに、本理論フレームワークより、不動産価格分析で良く用いられる2つのモデルが導出されることも示した。第一に、LancasterやRosenらのhedonic modelの導出を行った。均衡不動産賃料について、ヘドニック性が成立することは自明である。一方、均衡不動産価格については、以下の2つの仮定が成立するときに限って、ヘドニック性が成立する。(仮定1)不動産が保有する属性量が時間に依らず一定値を取ること。(仮定2)不動産の利用率(1-空室率)が、時間に依らず一定である、あるいは不動産に依らず一定値を取ること。第二に、Case-Shillerのrepeated sales modelの導出を行った。本研究が明らかにしたのは、不動産の対数価格の分散が時間に依らず一定値を取るという技術的な仮定が成立するときに限り、本モデルが妥当性をもってはじめて定式化される、ということである。
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京都大学数理解析研究所,数理解析研究所講究録 1675
ページ: 199-211
http://www.ilabfe.jp