研究期間の2年目である本年度は、前年度に基礎を確立した、いわゆるヘドニック・モデルを一般化する、不動産価格評価の理論フレームワークを発展・拡張しつつ、その有効性を示すべく実証分析を行った。以下に詳述する。 本研究では、金融資産には見られない不動産の特性に注意しつつ、構築した理論フレームワークに基づいて、不動産の価格とリスクを適切に評価するモデルを提案した。その背景として、不動産は、個人や企業等にとって最も大きな資産であるにも関わらず、株式などの金融資産とは異なり、その売買の意思決定において、手軽に利用・活用できるデータや分析手法が圧倒的に少ないという状況があり、その1つの解決策を提案したい。 本研究の提案モデルの、既存モデルに比べた特徴と優位性を、我が国の不動産価格を用いて示した。特に、2つの知見を得た;第1に、我が国の不動産価格には理論の想定を超える大きな歪みが存在すること。第2に、立地する地域という個別性に応じて価格が変動すること、である。そして、これに起因する不動産価格の変動リスクを計量化した。本モデルは、完全競争下における不動産の理論価格と市場価格との乖離を、歪みと個別性という観点から捉えようという理論的背景を持つが、結果として、統計分野でBox-Cox変換を施した線形混合効果モデルとなっていることが興味深い。 その上で、Web上のデータやGoogle EarthやMapsなどの高度な地球儀・地図アプリケーションを効果的に用いて、提案するモデルに基づいて評価した不動産の価格とリスクを表示する地理情報システム「不動産バリュエーション・マップ」への応用を提案した。
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