「研究の目的」や「研究実施計画」に沿って以下の研究実績を挙げた。研究年度の最終年度でもあるため、本研究分野のサーベイもあわせて行った。 ○金融資産・不動産・企業の価値とリスクについてレジーム・スイッチングを考慮して評価・計測すべく、これを考慮した因子分析を提案した。その上で回帰分析と比較しつつ、わが国のJ-REIT(日本版不動産投資信託)への投資におけるリスクの抽出をレジームごとに行った。 ○見えざる経済レジームのスイッチング下で、中長期的に投下資本の安定成長を求める投資家にとって、これらの資産をどのような割合で保有するのが最適であるのか、というポートフォリオ選択の理論を構築した。その際には、連続時間にて一般的なポートフォリオ選択について考察した上で、実証分析がし易い対数平均分散モデルを離散時間にて構築した。その上で、わが国の資本市場にてその有効性を実証した。 ○完全競争市場における不動産の均衡価格と均衡賃料、およびその増減率(リターン)を評価する理論を、金融経済学における動的ポートフォリオ選択理論に沿って構築した。その特徴は、不動産を金融資産と同じ脈絡で分析する基盤理論となっている点である。 ○上記理論と整合的な不動産価格の統計モデルをいわゆる混合効果モデルとして提案した。加えて、そのリターンの時系列モデルも提案した。 ○提案モデルをわが国の不動産市場、具体的にはJ-REITが保有する不動産に関するデータ、および国土交通省が土地総合情報システムとして収集する宅地(土地と建物)とマンションのデータに適用し、その有効性を実証した。 ○これまでに、ファイナンス分野において研究されてきた金融資産・不動産・企業に関する資産価値評価方法について包括的なサーベイをまとめた。
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