研究概要 |
本年度は2つの主な研究を行った。1つ目は、タグチメソッドの独創性、原理とはなにかをロバストパラメータ設計の枠組みの中で考え直し、学術的な体系化を試みた。具体的には、まず、設計科学におけるタグチメソッドの位置づけを明らかにした。特に、タグチメソッドと従来の統計的品質管理とどのように違うのかを明確にした。次に、パラメータ設計の原理を数理的に解き明かすことを目的とし、特に、海外の研究者が提唱した一般化SN比とPerMIAの考え方に注目し拡張を行った。 本研究の2つ目は、タグチメソッドのSN比解析の新たなSN比(対数SN比)を提案した。この新たな計算方法は、従来の方法より簡便で、この新たな計算方法がタグチメソッドの背後にある考え方とも整合性が高いアプローチであると考えている。具体的には、まず従来のSN比の考え方を整理し、統計量としての母SN比という概念の重要性を指摘した。次に、新しいSN比の考え方を示し、推論方法の構築を試みた。また、新旧両方の方法でSN比計算を実際に行う手順を示し、実例を用いてその有効性を検証した。 従来のタグチメソッドにおけるSN比と感度に関する解析は、通常の分散と平均の解析(分散分析)を踏襲していた。しかし、これは一般化SN比の立場では,散らばり母数と期待値の解析と考えても問題はない。すなわち、本研究で提案したSN比も散らばり母数、期待値について一般化線形モデルのリンク関数として対数リンク関数を導入すれば、これまでのSN比解析を一般化線形モデルの位置(平均)・尺度(ばらつき)の同時要因解析の特別な場合と位置づけることも可能である。
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