| 研究概要 |
本研究は,電波式パッシブ無線タグ(RFID)を用い,学校,老人ホーム,病院等での使用を想定し,無線タグを名札に取り付けることによる日常の入退出管理,さらには,温度センサ等のセンサを組み合わせることにより,体温等の生体モニタリング,大規模災害時にがれき等の埋まった行方不明者捜索に活用できるシステムの構築を目指す研究である。想定しているタグ自身は電源を持たず,信号読み取り機から送られてくる電波をエネルギー源として動作する。そのため,タグ回路の省電力化,特に温度センサの省電力化が必須である。本年度は受信した電波を整流してタグの動作に必要な直流を発生させる整流回路と,効率を高めるためのアンテナ,整合回路の検討および試作を行った。設計においては回路の非線形性を考慮する必要があるために,アンテナの電磁界解析と回路解析をカップリングした手法が必要となり,その解析手法に関する研究発表を行った。解析結果によると,整合回路を用いて受信した電波を共振させることにより,整流回路の効率が高まり,UHF帯の電波を使用することで,10m程度の長距離での通信が可能であるとの結果が得られた。また,その解析結果に基づき,回路を試作したところ,電波を受信して,温度センサを含めて回路が動作することを確認した。ただし,試作した回路の電源効率,アンテナの実特性などの測定精度が不十分であり,改善が必要である。
温度センサの低消費電力化のために,本年度はサーミスタを用いた回路を提案し,試作を行った。その結果,約20マイクロW程度の電力で動作することを確認し,想定していた電力の範囲内に収まった。また,回路解析によるセンサ出力の予想値と実際の測定結果に相違が見られていたが,その原因の究明を行い,回路の改善を行った。
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