橋梁の損傷・劣化の程度や位置をセンサーで計測したデータから同定する構造健全度診断技術を開発した。特に実構造物で実証実験が可能な「テストベッド」を鉄道廃線に残存する橋梁を利用して構築した。 この構造健全度診断技術は、センサーと小型高精度加振器を組み合わせたもので、センサーには半導体基板上にマイクロプロセッサ、MEMS型加速度センサー、無線通信回路とアンテナなどを配置したスマートセンサーを用い、小型高精度加振器は圧電素子を特殊なホルダーで固定するものである。これによって任意の加振周波数で橋梁部材を加振しながら、その動的応答加速度を収録する。収録した応答加速度のパワースペクトルからオペレーショナルモードシェイプに相当する係数をマトリクス形式で算出し、その変化率を損傷指数として取り出す。 テストベッドは廃線となった鉄道の橋梁が12橋あり、通常では許可されない橋梁を損傷させながらデータの変化を観察することが可能になった。また、観測小屋に電源とインターネット接続を備え、カメラとインターネット電話システムで遠隔での実験状況の確認ができる。 なお、本研究においては当該年度中に近郊の道路切り替え工事に伴う大規模な道路橋の撤去工事が行われた。これに応じて実橋梁の振動測定実験を実施した。この実験により、スマートセンサーの実環境での運用では、自律型の電力供給設備が必要であることや取得した大量の測定データを合理的に管理することの必要性が認識されたため、次年度に向けて技術開発を行うこととした。 また、研究の過程で得られた、廃線橋梁について土木史上の考察を行い、この結果についても学術論文として講評した。
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