研究概要 |
テロや暴動により同時多発的に生じる火災を迅速に消火する方法として,爆薬により形成される爆風を用いた消火法に着目し,その基礎研究を行っている.本年度は爆薬を選定し,従来の研究結果が豊富なアジ化銀(昭和金属工業(株))を使用することに決定した.アジ化銀ペレットは,直径1.5mm,高さ1.5mmの円筒形をしており,薬量10mgでエネルギ量は約18Jである.起爆にはQ-switched Nd:YAG Laserを,波長:532nm,エネルギ量:20mJ/pulseで用いた.消火対象には,消火実験が容易な気体燃料であるメタンを用い,内径28mmのステンレス円管バーナにより形成した.そしてアジ化銀ペレットの起爆点とバーナ中心との距離を変化させ,また形成する火炎高さを変化させて消火実験を行った.その結果,爆発する爆薬のエネルギ量によって決定される爆風の到達範囲の中に,バーナ中心が存在する場合,約370mmのメタン-空気拡散火炎を微小爆薬による爆風で消火することに成功した.そして爆風の到達範囲からバーナ中心が外れると,消火が達成される確率が急激に減少することも確認できた.また,高速度撮影が可能な高速度デジタルカメラを用いて,300fpsの条件で微小爆薬による消火の過程を観察したところ,起爆とほぼ同時に火炎の基部領域が消滅していることがわかった.そして,基部領域が消炎した後に,下流に残る火炎はほとんど下流に流されることなく,その場で火炎面積を小さくし,最終的に全体消炎が生じることがわかった.
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