1. 研究の目的および内容 路面すべり摩擦係数μを予測・推定することは、冬期道路安全対策の適正化において今後益々重要となる。μの予測に重要な路面の熱収支は、気象や地形などの自然要因に加えて人為要因(車両の熱的影響(車両熱)や凍結防止剤)によって支配されるが、従来モデルの多くは人為要因を殆ど考慮できていない。 本研究の目的は、車両熱と凍結防止剤影響を考慮したμ推定モデルを開発することにある。そのために本年度は、(1)自由走行速度区間および交通信号交差点付近でそれぞれ気象観測、交通量調査および路面温度測定を、(2)凍結防止剤(塩化ナトリウム)を事前散布した舗装を結露凍結させる室内実験を、実施した。また、μ推定モデル開発の前段として、車両熱と凍結防止剤を加味した熱収支路面温度モデルをそれぞれ構築した。 2. 研究の成果 (1) の結果、気象や交通条件によるが、自由走行速度区間では車両の通過に伴い発生する風が路面温度を低下させるように作用し、交通信号交差点では車両熱は停車時に路面温度の上昇に寄与し、走行時に路面温度の低下に寄与することが分かった。また、車両熱を考慮した路面温度モデル(車両熱モデル)による路面温度の計算値は測定値を良好に一致し、乾燥路面の熱収支に車両熱を組み込むことができた。 (2) の室内実験の結果、凍結防止剤を散布しない舗装では、結露量の増大に伴い急激にμが低下したのに対して、散布した舗装では凝結した水分が凍結防止剤と反応して液相となったために、μは緩やかに低下した。また、凍結防止剤の影響を組み込んだ路面温度モデル(凍結防止剤モデル)は、結露量および塩濃度の実測値を概ね再現することができた。
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