本研究の目的は、操船者によって異なる船舶の衝突回避判断の時機について特徴を明らかにし、さらに得られた知見を教育プログラムとして試行し効果測定を試みることである。現場調査を行ったところ船舶の大きさ(船型)によって判断時機が異なることが示唆された。次に実務経験者に対する映像実験ならびに質問紙調査を実施した。調査協力者は、大型船として外国航路船員32名、中型船として国内航路船員33名、小型船として漁船船員37名であった。結果から、船型によって距離感が異なること、衝突回避判断時機が異なることが示唆され、海上交通ルールが理想どおりに機能しないことが指摘された。得られた知見を考慮させる教育プログラムを船員養成機関学生に対して試行した。学生を教育群33名(教育プログラム実施)と統制群34名(教育プログラム未実施)に分け効果を測定したところ、教育プログラムは学生の判断時機を安全側へ変化させたことが示唆された。
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