研究課題
本研究は、建築構造物が損傷を受けた後の微小かつ局所的な残留変位を高精度に計測できるセンサを開発し、それを多数用いることで、建物に残された耐震性能を定量的に評価する手法を確立することを目的としている。申請者は、早大ナノ理工学研究機構が進める産学協同のコンソーシアムNICSに参画し、鹿島建設および早稲田大学・建築学科との「個別協働研究会」において実需に基づいた研究テーマの絞込みを行うことによって、層間変位センサの要求仕様をまとめあげた。そして、光位置検出素子(PSD)と自作の光学系を組み合わせて層間変位センサのプロトタイプを試作し、静的および動的な性能評価を行った。その結果、開発した層間変位センサは広い測定範囲を有するにもかかわらず、高い分解能と良好な応答性能を達成した。次の段階として、鹿島技術研究所の協力を得て、実建物の加振中に層間変位を計測する実験を行った。まず、可変剛性(AVS)建物に層間変位センサを複数取り付け、建物屋上から加振機によって模擬的な地震動を発生させる。そして、加振中のAVSシステムのON-OFF制御によって、通常の建物では再現不可能な残留変位を強制的に発生させ、従来手法である速度計と本層間変位センサで同時に計測した。従来手法では残留変位のリアルタイム計測は不可能であったが、開発した層間変位センサでは実測可能であることを初めて示すことができた。また本加振実験では、センサ取り付け部の局所的なたわみによって、計測データに20%近い誤差が入ってしまう課題を抽出した。これも層間変位センサの信頼性が高いために、正確な測定誤差の割合を初めて示すことができた。申請者らは、角度による誤差を補正するための独創的な手法を考案し、複数の特許を申請した。今後、変位と角度誤差の分離が可能な層間変位センサのプロトタイプを構築し、実建物加振実験によってその有効性を検証してゆく計画である。
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日本建築学会技術報告集 Vol.16, No.33
ページ: 469-472
IEEJ Transactions on Electrical and Electronic Engineering Vol.5, Iss.2
ページ: 251-255
http://www.tanii.nano.waseda.ac.jp/sens.html