種々の環境の下で実行される操船において操船者がどのような情報を必要としているのかを調査するため、操船経験の豊富な伊勢三河湾水先区水先人会の水先人に対し、操船者が船橋内で入手可能な航行環境情報に関し、その情報の重要度についてンケート調査を実施した。52名の水先人から回答を頂いた(回収率42%)。アンケート解析にはカイニ乗検定を使用して分析を行った。その結果、沿岸操船時と港内操船時で操船者が重視する情報が異なる事が確認された。例えば、沿岸操船では自船針路を、港内操船では水深を重要視しており、船籍や船種、船型、波に関する情報は沿岸操船および港内操船の両場面で重要度が低い傾向がある事がわかった。 また、実際の船上で行われている無線通信がどのように活用されているのかを実態調査した。ここでは、伊勢湾を航行している船舶の動静情報をAIS(国際船舶自動識別装置)受信機を用いてモニタリングすると共にVHF無線通信装置により船舶間の音声情報のやり取りについて調査した。二船間距離の変化状況やSJ値(主観的衝突危険度)を分析した結果、横切りの見合い関係において、無線通信を行った船舶は、無線通信を行わなかった船舶より航過距離が近い事が確認された。つまり、他船に対して予め針路情報を提供する事で、本来なら危険と感じる状況での操船が可能となる事がわかった。 これらの研究成果について、外部で講演を行い、航行環境情報の重要度について検討を行った。
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