災害による人的被害を低減するためには、住民がリスクを認知し避災行動をとることが重要である。しかし現実には、災害危険時に自治体より発令される避難勧告等を聴取しても避難しない住民が多い。昨年度につづき、過去の災害調査研究事例をコンパイルし、避難行動の意思決定に影響する項目として整理した。整理にあたっては、影響項目を、認知的項目(災害の深刻さ等)、属性項目(年齢等)、環境項目(情報取得経路等)などに分類して行った。整理した各項目について、修正防護動機理論などの態度変容研究のモデルで設定されている概念要因(「反応効果性」「自己効力感」等)との比較を行った。 また、平成22年2月末のチリの地震にともなう津波情報および避難勧告の住民伝達および、平成22年10月の豪雨によって被害をうけた奄美市において、住民調査を実施した。調査項目は、被説明変数として避難の実施の有無のほか、説明変数として、事前のリスク認知に関する項目(自宅の水害被災履歴、ハザードマップの閲覧状況など)や、直前の取得情報(気象警報や避難勧告等の聴取の有無・媒体状況など)、情報取得後のリスク認知(河川の氾濫予想、自宅の浸水予想など)、選択した避難場所などとした調査結果について、説明変数間の相関や交互作用の有無について解析するとともに、避災行動に影響をおよぼした項目について探索的な解析を行った。
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