研究概要 |
前年度に引き続き,2007年7月に発生した新潟県中越沖地震によって被害を受けた柏崎市を対象として,地震前後の数値表層モデル(DSM)を作成し地震被害と関連づけて分析を行った.地震前のDSMと地震後のDSMの差分をとると,標高が小さくなっているところと建物被害の場所が対応することから,本研究で構築したDSMの精度については検証できたものと考えている. 新潟県中越沖地震のみでは,人工改変地形と埋設管の被害について定量的な評価を行うことが難しかったため,1995年兵庫県南部地震の際の兵庫県西宮市についても検討対象地域として追加した.西宮市に関しては,昭和36年に撮影された空中写真を用いて作成した数値標高モデル(DEM)と明治44年に作成された地形図から等高線を読み取り作成したDEMの2つを旧地形として用いた.また埋設管の被害としては,上水道管の被害を分析対象とした.その結果,西宮市の水道管被害は,液状化が主要因となっている地域を除くと,切土や盛土などの造成が行われている地域に被害が生じていることが明らかとなった. 人工改変地における水道管被害を250mメッシュ単位の被害率として整理し,メッシュごとの人工改変状況と被害率の関係を評価した.メッシュごとの人工改変の程度を表す指標値として,盛土表面積,盛土境界長,切盛地形の割合などを採用し,水道管被害率との相関性を分析した.いずれの指標値も水道管被害率と正の相関を示し,水道管路被害が小さかった地域は切土,盛土があまり造成されていない地域であることは説明できた. 以上の検討を踏まえると,切土,盛土などの人工改変地形は水道管の被害に影響を及ぼしていることは明らかとなった.しかしながら,切土高さや盛土高さなどをパラメータとした説明力の高い被害予測式の構築は困難であった.
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