本研究の目的は地震に関連する地圏-大気圏-電離圏結合の物理的機構の解明である。本年度は準静的な大気電場が電離圏に及ぼす影響について研究を行った。この大気電場の微小変動を捉えるためには地球規模電気回路(global electrical circuit;以下GEC)における日変化および他の気象要素起因の変動と識別する必要がある。そのため、GECでの日変化を正確に捕らえるため南極昭和基地、小笠原父島および富士山、乗鞍岳(いずれも夏季のみ)に大気電場、一部の観測地点には空中電流、大気イオン観測装置などの観測機器の設置を行った。次に地圏と電離圏における準静的な電磁気的な結合を観測的に調べるために皆既日食における広域的な大気電場観測を行い衛星等データを用いて関連を調べる研究を開始した。上記はなんらかの先行的電磁気的変動が地表に出て大気圏ないしは電離圏擾乱の起因となってると考え研究が進められているが、逆に大気圏ないしは電離圏を生じさせるような何かの現象が、大気圏ないし電離圏擾乱を生じさせるのと同時に地震を誘発させている可能性がある。地震の誘発現象は近年研究が大きく進展しており徐々にその機構が明らかになりつつある。従って我々も、この視点から現象の解明を試みるため防災科学技術研究所と共同研究し、地震の誘発現象の基礎研究を開始した。本年度の成果は火山地帯での誘発現象に潮汐起因する明瞭な地震活動変動を見いだした。今後もこの視点における因果性についても研究を行っていく。
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