研究概要 |
力学的に不均質な地質構造をもつ火山体内部におけるダイクの成長過程の解明のため,野外調査により地表に露出するダイクの形状を計測し,火山体内部のダイクの構造的特徴を明らかにするとともに,得られたダイクの形状からマグマの過剰圧等の貫入条件を推測する手法を開発した.三宅島火山の山頂火口壁に露出するダイクの形状とその母岩の地質構造を計測し,ダイクの全体構造発達メカニズムを母岩の不均質構造を考慮しながら解析した.遠距離からダイクの形状を画像上で計測するための手法の開発を行い,ダイクや露頭の形状を考慮した補正方法を開発し野外調査に適用した.三宅島の山頂火口壁に露出する100以上のダイクの形状を測定した結果,三宅島に露出するダイクでは,地表に到達し噴火したダイクと,地下で停止したダイクの2種類があり,それらの形状には系統的な違いがあることが明らかになった.また,ダイク母岩の平均的物性を周辺の野外調査の結果に基づき仮定することにより,ダイクの形状からダイク内部のマグマ過剰圧及びその分布を解析的に推定する手法を開発し,三宅島の複数のダイクに適応した結果,ダイクの過剰圧が母岩強度に支配された一定の範囲の値をとることを見出した.三宅島での調査により明らかになった,噴火を引き起こした供給ダイクと非供給ダイクの形状の違いは,主にマグマの過剰圧の違いによることが推測された.本研究の成果により,ダイクが地表に到達して噴火を引き起こす条件について,マグマの過剰圧と母岩物性から制約を与えられることが示唆された.得られたダイク発達モデルを実際の割れ目噴火のパターンと比較するため,ストロンボリ火山およびエトナ火山の最近の割れ目噴火の調査を行った.
|