研究概要 |
一連の津波荷重によるコンクリート壁の破壊解析により,(1)この解析に適した動的破壊基準を選定し,(2)時系列に沿って主要な亀裂の発生と進展の詳細な解析結果を得た.また,(3)曲げモーメントに耐えるための補強材を加えることで亀裂の発生を遅らせ,亀裂の進展範囲を縮小できることが分かった.港湾空港技術研究所による実験によれば,大きさ2.5mx2.5m,厚さ10cmのコンクリート壁に高さ2mの津波が衝突することで生じる歪み速度は最大で60s^<-1>である.一般的には,これらの歪み速度は動的破壊基準を採用するには小さいが,Geers (2000)らによる動的破壊基準において動的引張強度を静的引張強度と同じ値に設定した場合,他の静的・動的破壊基準を用いるよりも正確に実験で得られた亀裂形状を再現できることが分かった.これにより,実験で得られた亀裂形状と亀裂の進展順序を再現できるようになった.また,曲げモーメントに耐えるための補強材を加えることで亀裂の発生を遅らせ,亀裂の進展範囲を縮小できることがわかった. 腎臓結石の破壊解析では,焦点から離れるに従って急速に小さくなる圧力場を考慮する必要があることが分かった.また,結石中のせん断衝撃波の数値解析結果を検証した.体外衝撃波結石破砕術では,腎臓結石上に設定する焦点からの距離が遠くなるに従って衝撃波の振幅は急激に小さくなる(Zhong et al.2006).数値解析においてこのような振幅分布を考慮しない場合,結石内で衝撃波が過大評価されてしまい,結石の背面に実験よりも大きな損傷痕が生じることが分かった.腎臓結石内で生じる衝撃波の数値解析結果は光弾性実験による観測結果との比較を通して検証した.これらの結果から,腎臓結石の主な亀裂はせん断衝撃波による高い応力が原因であることが確かめられた.これは体外衝撃波結石破砕術に関する研究として重要な結果である.
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