研究概要 |
土木構造物の耐震設計においては,性能設計が一般的になりつつある(IS023469,2005).この設計手法は,目標性能を満たすことが保証される限りどのような設計を行っても良いというものであり,設計における自由度が大きいことが利点である.また,従来の応力に基づく設計法などと比較すると経済的な設計となる場合が多く,今後わが国のみならず世界的にも士木構造物の設計法の標準になりつつある,一般の土木構造物における上部構造物については,この設計手法がいち早く取り入れられている(IS03010,2001).しかし,大地震時に地盤と構造物とが相互に作用し合う地中構造物や地盤-基礎構造物系については現象が複雑であるため現段階では性能の照査が難しく,その適用が遅れている.地盤の変形を最小限に抑える方法としては,地盤内に固化材料を注入する等の地盤改良がなされることが多く,これまでの大地震においてもその効果は確認されている。しかし,広域的に分布する比較的重要度の低い地盤構造物については,経済性の面から同様の対策を講ずることは難しい.そこで,本研究は,地盤材料の剛性等を部分的に変化させることで材料の不均質性を導入した場合に,地盤-構造物系の動的な変形挙動がどのように変化するのかを調べ,設計者の意図したモードで,意図した量だけ変形を導くよう制御を試みるものである. 本年度の研究では,地盤の中の不均質性として,飽和緩詰砂地盤を作成し,その上に設置した構造物の挙動について,変形の制御は試みずに、第1段階として単純なケースで不均質性の影響を遠心模型実験を行い調べた.具体的には,重力式岸壁の直下を緩詰にした場合と,密詰にした場合とで,どのように挙動が異なるのかを調べることを目的とした.実験の結果,岸壁の挙動に,不均質地盤(緩詰地盤)の大きな影響として,大きな地盤変形と構造物の変形が観察された.
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