屋上緑化資材メーカ、施工メーカへの市場調査から、屋上緑化パネルの雨水貯留特性の把握には、緑化パネルを構成する層(貯排水層、土壌層、植栽層)別の貯留特性を把握する必要が示された。2009年度は、灌水頻度を減らし、天水のみで植物生育を可能とするために開発された、貯排水層がどの程度、雨水を貯留できるのかを明らかにする実験を行った。 供試材には、厚さと表裏面の凹凸構造の異なる発泡スチロール製ボード5種を準備した。想定する降雨イベントは、雨水流出の対策を講ずる「局所的集中豪雨」に対応させるため、東京都の過去の水害記録を分析し、使用する人工降雨装置(大起理化、DIK-6000)の設定限界値である時間150mmを連続1時間的化することとした。これまで、流量は、メスシリンダーを用いて、設定した時間ごとに手動で計測していたため、降雨開始直後および降雨停止後の流出状況を詳細に把握することが難しかった。そこで、本実験では、降雨イベントの有無に関係なく、パネルからの流出を連続的に測定できる流量計(KEYENCE、FD-M5AT)を導入した。流量は、1/10秒刻みで計測し、データロガ(KEYENCE、TR-V500)に保存した。実験は、1日4回(午前0時、6時、午後0時、午後6時)とし、1週間ごとにデータロガに保存されたデータを回収し、それぞれ1分間の平均流量に換算し、流出ハイドログラフ、累積ハイドログラフの作成と合理式への代入から、流出遅延時間および流出係数を算出した。その結果、5種の貯排水ボードの流出遅延時間は4分(2種)、5分(3種)、流出係数は大きいほうから、0.98、0.97、0.91、0.79、0.63となった。
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