2010年度は、2009年度に使用した貯排水ボード5種に、土壌を充填し、芝を植栽した緑化パネルが、どの程度雨水を貯留できるのかを明らかにする実験を行った。供試土壌は、有機物や肥料などにより貯留に影響を与えない屋上緑化用人工土壌(石炭灰由来人工軽量土壌)、供試植物は、早期の緑化と想定する粗放管理型薄層屋上緑化で生育が可能なケンタッキーブルーグラス(Poa pratensis)のミッドナイトIIのソッドを採用した。降雨量は、予備実験の結果から、時間75mmを連続1時間滴下することとした。緑化パネルからの流出状況は、貯排水ボードのみの時と比較し、流量の減少が考えられたことから、0.01mL程度の超微小流量が計測可能な流量計(KEYENCE、FD-SS2A)を用いた。また、貯排水ボードと異なり、土壌の水分状況が緑化パネルの流量に影響を与えることから、降雨イベントは1日1回(午後6時)とし、4日間連続して計測、データをデータロガ(KEYENCE、TR-V500)に保存した。緑化パネル1区につき、4回の連続実験を2区2回の流量を計測した。1/10秒刻みでデータロガに保存された流量は、貯排水ボード実験と同様、それぞれ1分間の平均流量に換算し、流出ハイドログラフ、累積ハイドログラフの作成と合理式への代入から、流出遅延時間および流出係数を算出した。その結果、雨水貯留・流出抑制を期待した降雨イベント前に連続した降雨が発生し、パネル内の水分状態が湿潤だった場合では、3種のパネルとも、流出遅延時間は6分、流出係数は0.48に変化した。以上の結果から、緑化パネルの貯留特性は、水分状態に影響を受けるものの、湿潤状態であっても、ある程度の効果が期待できることが示唆された。
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