研究概要 |
2011年度は,まず,2010年度に実施した粗放型薄層屋上緑化システムの雨水流出抑制効果の定量化を試みた.流量計(KEYENCE,FD-SS2A)で計測し,データロガ(KEYENCE,TR-V500)に,1/10秒刻みで記録した流量を1分間毎に相加平均を算出し,降雨停止2時間後までの流量を解析対象に,流出・累積ハイドログラフを作成した.作成したグラフから,同一供試システムにおいて,複数の流出特性を有することが確認できた. また,実験終了後,すべての緑化システムを解体し,ソッド・土壌層・貯排水ボード毎に重量を計測し,貯水率を算出し,二元配置の分散分析を行ったところ,本実験で採用・した降雨量及び降雨間隔においては,ソッド・土壌層・貯排水層の3層構造をとることが雨水貯留に有効であり,特にソッドにおいて雨水を多く貯留していることが示唆された. これらの結果をもとに,浸水被害の発生した実績降雨パターンとして,2000年9月11日~12日に発生した東海豪雨時の降雨パターンとケーススタディ地区(東京都千代田区神田駿河台周辺)において,屋上緑化施工の有無による雨水流出量の変化を算出した.そして,緑化計画への展開を検討するため,屋上緑化の施工により,機能的に緑が広がる全体計画への展開が期待できる杉並区をケーススタディに雨水流出量を算出した.その結果,雨水流出抑制型屋上緑化施工区は,想定する地域の屋上面積及び建物の配置に影響を受けることが示唆された. 研究期間全体を通して,(1)局所的集中豪雨に対して,粗放型薄層屋上緑化システムでも,雨水貯留と下水道への流出抑制・遅延効果を有すること,(2)土壌層・排水層が湿潤状態の場合は,流出遅延効果のみが期待できること,(3)屋上緑化の流出係数は,システム内の水分条件により0.20から0.48の値をとることが明らかになった.
|