研究概要 |
本申請研究では、地震発生直後の限られた情報しか得られない情報空白期に着目し、災害初動時における水道事業体の対応方針・目標を明確にした災害対応業務を確立することを目的としている。これらの目標を達成するため、昨年度(平成21年度)に構築した水道管路被害件数予測モデル、応急復旧数値シミュレーションモデルをベースに、目標に管理に基づく災害対応業務のモデル化を行った。具体的には、東南海・南海地震を対象として、応急給水業務を含めた数値解析モデルを構築し、水道システムの地震被害により得ることができなかった水量としての機会損失量による評価手法を開発した。 神戸市水道局との共同研究を実施することにより、ハード・ソフト的な震災対策による機会損失量の低減効果について明らかにした。その結果、水道事業体における目標による管理に基づく災害対応を実践することが、災害後のリスク低減に効果的であることを示しえた。また,水道事業体における目標による管理に基づく災害対応に求められる要件について、情報論的、組織論的観点から明らかにした。 また、本研究で構築した手法を用いて、2011年3月11日に発生した東日本大震災における水道システムの被害予測、目標となる応急復旧期間の推定を、災害発生直後に実施しえた。 これらのことから、本研究の成果により、水道事業体の効果的な災害対応システムを提案するとともに、災害時の情報提供手法を組み込んだ災害対応支援システムの基礎的なモデルとしてライフライン防災の発展や災害時のリスク低減に大きく寄与することができると考えられる。
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