研究概要 |
1.配列データベースに相同性検索を行って、そこから挿入欠失・置換といった多型を選び出すデータベース検索対応型のゲノム多型検索手法を開発した。本プログラムは、塩基配列レベルのオーソログ判定を行い、相同領域をブロックとして検出し、そのブロック同士の位置関係の組み合わせで、多型のパターンを判定して拾うべき多型を絞り込む。通常修飾酵素遺伝子が制限酵素遺伝子と対をなすことから、この多型検索プログラムを使い、多型領域に修飾酵素遺伝子と対をなしている機能未知遺伝子から制限酵素遺伝子を探索した。得られた候補からは実際に制限酵素活性を持つ新規遺伝子が実験的に同定されている(Khan,Furuta,Kawai et al.,Nucleic Acids Research,2010)。この検索手法により、完全ゲノム配列以外の配列情報に加えメタゲノム配列データも対象とした多型検索や、特定の近縁ゲノムの組み合わせ(多対多)にとどまらない多対配列データベースレベルの比較が可能になった。2.ゲノム同士の対応する遺伝子の分布パターンから機能的に関係する遺伝子を抽出する系統プロファイル法を、近縁生物種間で特徴的な進化パターンを示す遺伝子の探索に応用した。遺伝子の有無だけでは差が出にくいので、相同遺伝子の数の違いや遺伝子が分断しているか否かを数値化して用いた。種もしくは属相当の生物群で、群内の2つ以上のサブグループそれぞれで複数株のゲノムが決定されているものを用いて検証した。本手法をピロリ菌のサブタイプのゲノム比較に適用して、東アジア型のピロリ菌では酸化還元に関わる特定の経路(モリブデン補酵素を利用する経路)が崩壊していることを明らかにし(Kawai et al.,BMC Microbiology,2011)、また、ゲノムの逆位に伴う遺伝子重複というゲノム進化パターンを見いだしている(Furuta*,Kawai* et al.(* : equal contribution),Proceedings of the National Academy of Sciences,U.S.A.2011)。
|